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第四章


<星ドロボウ観測所建設へ> もっともっとたくさん小惑星を発見したいと思うのは人情でしょう。どうしたら効率より発見できる のでしょうか。答えは簡単。広写野望遠鏡で撮影すると良いことは誰でも分かります・・・。 ある日、某天文雑誌の編集記者から電話があり「円館さんの取材をさせて下さい」と数日後、 記者が来町した。雪が降り積もった翌日のことでしたが私の自慢の観測所を見てもらい記者 と話をした。「円館さん。私の設計したシュミットカメラを使用してみませんか?」「4×5サイズ で使用できるホルダーなら・・・」と、これまでよりずーっと大きなサイズのフィルムを使用し電 動シャッターなどを付けた望遠鏡をその場でイメージした。「出来ますよ!」と言う返事で製作 を依頼したのでした。彼は雑誌記者でありながら自作機材を作るのを趣味としているが、今回 は小惑星観測用として精度の高い望遠鏡を製作することになった。しかし私は3年待った・・・ あれから3年。「円館さん。お待ちどうさま!」と1990年の秋のこと。「あともう少しで完成です」 と言うことで、いよいよ待望のシュミットカメラが届くぞぉと喜んでいた。しかし喜んでばかりもい られません。このシュミットカメラはとても大きくて、ひと一人入れるくらいの大きさがあります。 こんな大きな望遠鏡を現在の観測所には置けないので新しく観測所を建てることを決意した。        1991年4月。雪が解け観測所の隣にドーム型の観測所を建てることにし、建物の基礎の穴堀        りから始めた。基礎はコンクリート管を8本。水平を取りながら埋めた。これまでの作業で約3週間        かかり夜は夜で柱の切り込みを行った。今度の観測所は8角柱をした建物で柱の切り込みも        複雑である。何度も設計図を書き直し、間違わないように設計どおり切り込んだのだが、果た        して本当に8角柱の建物として建つのだろうかと心配だった。5月下旬、いよいよ建て前を行        う。トントントン。「よーし、ここ打って!」と北見市の星仲間の助けをかりて建て前は始まった。「建        った建った!」見事に設計図どおり建物が建った。 一方、8角柱の建物は建ったものの肝心のドームの製作がま だである。ドームは以前3m8角形型ドームを製作した経験が あるため製作の要領はわかってる。しかし今回は3.6mと大き く製作を困難にした。まずは実寸大の型紙の製作。次は型紙 をコンパネに書きジグソーで切る。数十枚同じ型を切り別の 型とつなぎ、何枚も張り合わせる。この作業を1ヶ月間ほど続 け、ようやくドームの骨組みが出来た。今度はコンパネを何枚 も重ねた骨組みを組み立てる作業です。 平らな土台の上に直径3.6mの丸いドーナッ板を置き、ドーム の骨組みを組み立てて行きます。ほとんどズレもなくピッタリと 組あがりました。あとは壁のベニヤを張り、次にドームの窓で あるスリットを製作した。最終的にトタンを貼るのですがここは 業者に任せた(雨漏りしないように)のでした。        朝の4時。完成した8角形型ドームをトラックに乗せて、自宅から観測所へと向かった。行く途        中「本当にドームが観測所にのるのかなぁ〜」と心配しながらトラックは観測所へ着いてしまっ        た。「オーライ、オーライ!」クレーンに吊り上げられたドームは8角柱の観測所の上にゆっくり        ゆっくりと運ばれた。「よーし、そのままゆっくりと・・・」ドームはピッタリと高さ3mの観測所の上        に乗った。「フーゥ、乗っかったな〜ぁ・・・」1トンもあろうかと思われる大きなドームが無事乗っ        たのでホッとしたのでした。手でドームを回すと360度回転する。何度も何度もドームを回して        はニタニタしていたのでした。        その後スリットにギヤを取り付け、ガラガラとスリットが手動で開くようにした。そしてドーム内の        床張りをし壁張り作業をした。こうして毎日毎日、夜中の0時ごろまで作業を行う日が約6ヶ月        続いた。気が付いてみると体重が76kgあったのが63kgに減っていたのだった。                                 

<小惑星観測専用望遠鏡?!>
       ガラ ガラ ガラ。ハンドルを回すとゆっくりスリットが開く。ゴロ ゴロ ゴロとドームが動く。巨大で真っ        白な四角い望遠鏡が指一本で動き、スイッチ一つで望遠鏡のシャッターが開く。こんなプロの        天文台みたいな観測所が出来上がった。ボクにとっては夢のような観測所。夢が現実のもの        となり超嬉しーい!と、喜んでもいられなかった。この真っ白な巨大望遠鏡は3年間も待たさ        れた望遠鏡である。この望遠鏡はシュミットカメラといい、口径が25cm焦点距離は65cmあ        る写真専用望遠鏡である。鏡筒は約30mmある合板で出来ている木製の鏡筒。主鏡やその 他の備品は中古品を集めた物で出来ている手作り望遠鏡なのだ。 当初は完成した状態で届くはずだったのですが、どういうわけか半製 品のまま観測所へ届き、観測所で組み立てて望遠鏡の調整を行った。 このシュミットカメラは写真専用であるために星をのぞき見ることが出   来ないのです。調整を行うにもフィルムで撮影しないと調整できないと いう代物。約1ヶ月間、撮影を行ってはすぐにフィルム現像しシュミット カメラの調整を行うということを続けました。テスト撮影したフィルムは       約100カット。苦労もあってかようやく調整が終わり、約8度を撮影できる広写野な望遠鏡が        完成したのでした。        この手作りのシュミットカメラで小惑星観測を始めました。撮影したネガから「オッ、ここにもあ        る!ここにもある!」と次から次へと未発見の小惑星を発見しました。一番多いときには1カッ        トに20個もの新小惑星が写っていたときがあり、1年間に約200個の小惑星を発見したこと        もありました。しかし、ボクにとっては悔やんでも悔やんでも悔やみきれない出来事があった        のです。

<不運な出来事!>
       1993年3月15日。いつものように自慢のシュミットカメラで小惑星観測を行っていた。この        季節、とても明るい木星が撮影区域に位置していた。通常ならば木星を避けて撮影を行うの        が常識なのですが、ボクはあえて木星を写野の中に入れて撮影を行った。ネガには巨大な        木星が写り強烈な輝きで写し出されていた。このネガをチェックしてみると5個の新小惑星が        写っていた。そして3月20日、この5個の新小惑星を追跡しIAU(天文国際連盟)から新小惑        星だと承認されたのだったが、しかし、3月29日、パソコン通信でIAUC(国際天文連盟会報)        を見てビックリ。「1993年3月24日、パロマー天文台の46cmシュミットカメラでシューメイカ        ー夫妻とレビー氏が、おとめ座を撮影したフィルムから新彗星を発見した。発見等級は14等  星である。」とモニターに表示されていた。「そんなバカな。そこは俺が撮影 したところだゾォ!」と新彗星の発見を疑った。しかし、何度ネガを見ても彗 星の姿を見つけることが出来ない。それもそのはず。この彗星、ただの彗 星ではなかった。この彗星は帯状の形をしていて、あたかも小宇宙のよう な形をしていたのである。ボクはてっきり小宇宙だと思って見逃していたの である。相棒である札幌の渡辺氏はこのネガをチェックして無く「あの新小 惑星が新彗星だと思っていた」と弁解していた。しかし今となっては9日前 に撮影してあっても、もうどうしようもない出来事になっていた。        この新彗星とは世界中の話題になったシューメーカー・レビー第9彗星(SL−9)のことなの        です。このSL−9は翌年の7月に木星に衝突しました。世界中の天文学者達が注目し、テ        レビで連日衝突の痕の様子が大きく報道されていた。宇宙望遠鏡のハップル望遠鏡での画        像や外国の天文台で撮影した画像が我々のテレビでリアルタイムに見られた。そしてある        テレビ番組ではアメリカのシューメーカー夫妻とレビー氏が記者団たちの前で大喜びをして        いる姿が報道されていた。それを見たボクは「あそこの会見席に座っていたのはボクだった        のに・・・」と泣くにも泣けない悔しい思いをしたのでした。        我々アマチュアも興奮し世界中が興奮した天体ショーは無かったでしょう。そんな世界の歴        史に残る大きな発見をボクは逃したのでしたが、世界で最初にSL−9を撮影したという記        録は残った。

<ある思い出・・・星空への招待>
       今から13年前の8月12日のこと。網走博物館友の会主催の「星空への招待」という観望        会があった。ボクは近くの中学3年生の少年を連れて、この観望会へ参加した。        この観望会は、小清水原生花園展望台で午後8時から開催される。仕事を終え愛車ダット        サン4WDに7.6cm屈折望遠鏡を積み原生花園へ突っ走った。原生花園駐車場に着くと受        付所があり、そこにはボクの星仲間である網走の古瀬君がいた。受付を済ませ展望台に        登ってみると、そこには大勢の人達がいた。50名くらいはいただろうか。親子連れの家族        や恋人同士。若い学生のグループと色々な人達がいたのだった。「うわ〜ぁ、すごい!」「        きれいな星空だね」などと、女の子の声や子供の声が真っ暗な暗闇の中から聞こえた。確        かにきれいな星空だ。真っ白な天の川。数え切れない程たくさん星が見える。360度どこ        を見ても星が見え、遠くからは波のせせらぎの音が聞こえた。 人混みの中に大きな望遠鏡が立ってあった。望遠鏡は宇治 製の20cmF8の反射望遠鏡で経緯台に乗ってある。ボクは 始めてみる大きな望遠鏡だったので「デッカイ!」と驚いてし まった。そして、この大きな望遠鏡を操作して星の説明をして いる人がいた。「ここの星を見て下さい。これがはくちょう座の 一等星のデネブです。そしてこちらにあるのが、こと座のベガ です・・・」と優しく星座の説明をしながら望遠鏡を操作してい た。この人は当時女満別小学校の教論、林先生だった。「こ        れは球状星団」とM13を入れて見せてくれた。「すごい!」豆粒のような星が数百個以上も        密集して見える。「こんなの初めて見た!」とボクは感激してしまった。「アッ、流れた!」「明        るい!」と暗闇の中から声が聞こえる。「エッ、どこどこ?」と、まわりの人達が星空を見上げ ていた。「今、あそこに・・・明るかったなぁ〜」という声が聞こえる。        今日は8月12日。ペルセウス座流星群が見える日なのです。天体望遠鏡を覗いている間        に、あちらこちらで流れ星が流れていた。時にはとても明るい流れ星が流れ、「わぁ、すご        いすごい!」と悲鳴めいた声が聞こえる。しかし、悲鳴が聞こえてから星空を見ても、そこ        にはもう流れ星は見えなくなっていた。「流れ星に3回願い事を願うと願い事がかなう!」と        いう迷信は、とても無理な話です。流れ星が流れるたびに「あっ!」と言って、肝心な願い        事を言い忘れているのですから・・・        「うわぁ〜、すごい!」と今までの悲鳴より大きな声が聞こえたので、振り向いてみると何        とオレンジ色のとても明るい流星が見えた。明るさは−4等星はあったでしょうか。小清水        町の上空めがけて流星が飛び込んできたのです。その流星はオレンジ色からブルーに、        ブルーからグリンへと色を変え、小清水上空で急に明るくなり町全体を明るく照らした。ま        るで照明弾を発したような明るさだ。その後、その流星は分裂し地上へ落下したように見        えたのでした。その時の流星は何となく「シューッ」と音がしたような気がした。そら耳かな?        これがボクが始めた見た最初の火球です。火球は年に何度か見る事がある。ある日、い        つものように観測所で撮影していると突然まわりが明るくなった。長時間の撮影で頭の中        がボーッとしていたので「ああ、もう朝か」と思ったが違う。「そんなバカな」と思ってふと上        を見てみると、そこには巨大な流星が流れていた。「ふわ〜ぁ、すごい!」眠気も吹っ飛        んでしまった。        この様に8月12日には、毎年、たくさん流れ星を見る事ができる。不思議な話だが、1時        間当たり50個前後の流れ星が流れる。この日は夜明けまで、顔も見えないまま

<ある思い出・・・銀泉台>
       大雪山の銀泉台という所がある。ここは大雪ダムから大雪山へ向かって車で約10km入        った赤岳登山道入り口である。ここは標高1.500mほどある高い場所、赤岳には数カ所ま        だ残雪が残っている、ここ銀泉台へ私の星仲間達と星見に行ったのでした。        夕方、5時ごろ自宅を出発。星仲間の女の子を乗せ車には、びっしりと望遠鏡やカメラを        積んで約2時間半かけて銀泉台に着く。もう先に星仲間数人が着いていて、残雪の残る        山々をカメラで撮影していた。まわりはもう薄暗くなってきた。車の中で弁当を食べ腹ごし        らえをし望遠鏡を組み立てた。まわりはだんだん暗くなり、空には少しづつ星が見え始め        てきたのでした。 「うわ〜ぁ、スゴイ!」真っ白な天の川がボクたちの目に鮮やかに見え始め てきた。「これが本当のミルキーウェイだね!」真っ 白い星の川が天頂か ら地平線に向かって流れ落ちている。そんなイメージの天の川。生まれて 初めて見た。もはや星座の形がわからなくなるほど、たくさんの星が見えて いる。「これがはくちょう座!デネブがあまり目立たないなぁ〜」と仲間同士 で星空を見上げている。木星もまぶしいばかりの輝きだ!「木星の光で陰 が出来ているぞぉ!」などと星仲間みんなが興奮しながら 会話をしていた。 「おい、あれはなんだ!」と指を向けた方向を見てみるとポッカリと黒い空間が浮いている。 それもゆっくりと移動しているのだ。まるで星を飲み込んで行くブラックホールみたい。「あ れ、もしかして雲?」そうです。まわりに光害がないために雲が白く見えずに黒く見えるの です。それ程までに銀泉台は空が暗い場所なのです。ボクは、無我夢中で望遠鏡に乗せ たカメラのシャッターを押し続けた。 何時間も星を見続けても飽きないほど、ここの星空は美しい。 東の地平線からオリオン座が昇り始め、東の空が薄すらと明る くなり始めた。夜明けです。真っ黒な星空がブルーに変わり、東 の地平線が真っ赤な色に染まって行く。まわりの山なみが見え 始め、眼下には雲海が広がっていた。幻想的なこの情景を目 の当たりにすると、ボクは何だか幸せな気持ちになった。「これ って何だろう?」毎朝起きている朝焼け。数十億年も前から行 われている現象。私達人間の頭の中にある最古の記憶が一瞬よみがえるために心が共 鳴するのだろうと思った。        そして1時間もするとまばゆいばかりの太陽が地平線から昇り始める。まぶしい太陽、そ        の光線がボクの顔に当たるとポカポカ暖かく感じた。これ程までに太陽の光が心地よく感        じたことがない。頭がボーとしてくる。だんだん睡魔がおそい、何だか眠くなってきたのだ        った。          満天の星空を浴びるほど星を見て、朝焼けと日の出を見た。感動。そして自然の神秘を        見せられたボクたちは、睡眠もとらずに山を下りる。車5台、土煙を上げながら一気に山        を下る。国道に着いたボクたちは、後ろから来る仲間の車を待った。5分、10分、待って        も待っても降りてこない。「もしかして、事故?」と心配しながら、また林道を登って行った。        「あっ、事故っている!」車は山側へ乗り上げ立ち往生していた。車は数カ所、破損して        いたがドライバーはケガがない。ホッとしてゆっくりと車を走らせた。        フロントガラスから入り込む太陽の光が妙にまぶしく、重たいまぶたを開けながら車を走        らせ、心が洗われるような気持ちだったボクは、だんだん自宅に近ずくに連れて現実の        空間へ戻って行く自分を強く感じたのでした。                                

<ロボット望遠鏡誕生!>
「パチ、パチ、パチ・・・」とキーボードをたたく。「グィーンー・・・」と望遠鏡が動き出す。 ボクはコンピューターが4台置かれてあるパソコンルームに居る。パソコンを 目の前にして椅子に座り、パソコンを操作しいるのである。マウスで「ここ!」 とクリックすると観測室にある望遠鏡が自動的に動き出し、パソコンのモニタ ーに映し出されている星図の位置と同じ位置に止まる。望遠鏡に取り付けら れた冷却CCDカメラが撮影を行い、このカメラを操作しているパソコンのモ ニターに画像が撮し出されている。そんな夢みたいな自動制御天体望遠鏡  を、ボクは購入してしまったのは、昨年の冬のことだったのです。         小惑星観測を行っていると色々手間がかかる作業が多い。例えばフィルム現像やプリ         ント作業、またプリントチェックなど撮影するだけでも数十分かかるのに後の処理がさら         に時間がかかる。もっと合理的な観測方法はないのかと思っていたところ、ボクにぴっ         たりの観測機材が登場した。それは冷却CCDカメラで撮影し、望遠鏡をパソコンで自         動的に操作できる機材です。これは最近になってできたばかりの最新鋭の観測機材         で、ボクはいち早くこの機材を手にいれたのでした。          冷却CCDカメラとは、デジタルカメラに生じるノイズを冷却することで減少させて、長         時間露出でも撮影できる様にしたカメラです。例えば、撮影露出時間が5秒で15等星         が楽々写る。以前フィルム撮影では10分以上は必要だった。これ程までに感度が高         く撮影したその場で画像が見られる。何と露出3分では約20等星の恒星を写すことが         できた。それが冷却CCDカメラのすごいところなのだ。今までの撮影機材では18等星         がやっと、20等星の恒星を写真撮影するには口径50cmは必要で、とてもアマチュア         には手が届かなくプロが使用するような大型の望遠鏡で撮影するしかなかった。しかし、         それがたったの25cm望遠鏡で撮影できるのだから夢みたいな話なのだ。まして望遠         鏡はコンピューターで制御され、自由自在に望遠鏡を簡単に扱える。大きさは小さい物         のプロの望遠鏡みたいな雰囲気を味わえる。これって、とても快感なのだ。

<ドキッ、何だ???>
        ある日の事、この冷却CCDカメラで私が発見して回帰してきた小惑星を撮影していた         ところ、モニターに突然、スーと伸びた線上の天体が写っていた。「あれっ、何だろう?」         と思ったものの「また、人工衛星に違いない!」と次の小惑星に望遠鏡を向けた。しか         し、先ほどの線上に伸びた天体が気にかかり、再度撮影した画像を見ることにした。         「あれっ、これは人工衛星でないかも知れないぞぉ!もしかして、特異小惑星かも・・・」         と心臓がドキドキし始めてきた。この高速移動天体を再度撮影しようと思い、位置を         決めようとしたら「えっ、これは早すぎる!」「ところで南北、どちらに移動しているん         だ?」と、5分も経ってからでは、とても追跡できる小惑星ではなかった。慌てて小惑         星の位置を測定したが、その時はすでに遅く、夜空は雲に覆われて星は1つも見え         なくなっていた。         「あ〜ぁ、あの時すぐに追跡していたなら・・・」と後悔もあったが「あれは、きっと人工         衛星だ!」と自分に言い聞かせていた。         もし、あの天体が小惑星だったら、たぶん、月の軌道の内側まで近づき、地球をか         すめた(ニアミス)特異小惑星に違いなかっただろう。もし特異小惑星だったら・・・、         しかし口元では「人工衛星、人工衛星・・・」とつぶやいている自分がとてもいじらしく         感じられた。この天体については、小惑星センターには報告していない。これはボク         だけの「夢の天体」として心に閉まっておいているのだった。                                

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